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パタヤの顛末(その1)

ずっと以前勤めていた広告代理店は、課ごとに交代して夏休みを調整していた。その年、特別な計画もなかったわたしは9月下旬にとりあえず夏休み申請した。
が、夏休みまであと1週間ちょっとと迫ったある日、社用の外出でふと通りがかった旅行代理店の店頭パンフレットを見て、突如「海外旅行」を思い立ち、いきなり入店。
「今から間に合うツアーありますか? ひとりなんですけど」
窓口のお姉さんは半分目が点になりつつ
「ど、ど、どのあたりがよろしいですか? しかし、おひとり様だと決まっているツアーに便乗する形になりますから、限られますが……」と困り顔。
「あんまり飛行機に長く乗らない近所がイイです」
近所って……、困惑しながらお姉さんはコンピュータをピコピコ。
「あ、これなら大丈夫じゃないでしょうか? タイのパタヤですけど」
「タイ?パタヤ?」……タイにもパタヤについてもまるで事前知識のないまま、
「じゃ、それで」と即決。
「ご一緒のお客様も、駆け込みでお決めになられた新婚様ですので、おそらくキャンセルはないと思いますよ」とお姉さん。
わたしは、見ず知らずの新婚さんが破局しないことを祈った。

幸い、破局はなかった。無事バンコクに到着し、ツアー現地ガイドを探す。
すると、そこに集まっていたのは「例の新婚カップル」「若い女の子二人組」「わたし」のなんと5人、全員が駆け込み申し込み。ソムという名の現地ガイドも「フダンハ、フタリグミバカリネ。コンカイハ、スゴイオオニンズウネ」とびっくり。
「新婚カップル」はアツアツかと思いきや、同棲6年の末に入籍した記念旅行というお友達的夫婦。女の子たちは季節ごとに海外へ行くというフレンドリーなふたり。それに女ひとり参加で最も年長者の私。すっかり意気投合した5人は、ダーリン、ママ、Sちゃん、Yちゃん、オネエサン(これはわたし)と呼び合い、コー・ラン行きやパタヤ特有の豪華オカマショーなどオプショナルツアーも全員で参加し、ほぼ団体行動となった。
現地ガイドのソムもすっかり仲間だ。本来は業務外であるはずの自由時間に「ニホンジンデモダイジョブナミセ、アンナイスルネ」といって屋台巡りなどに付き合ってくれた。

さすがに最終日だけは、それぞれ自由行動。
ダーリンとママは、恋人当初のようなアツアツぶりを発揮して、どこかへ出掛けて行った。
SちゃんとYちゃんは、勇み立ってショッピングに向かった。
わたしは、持参した文庫本を手にプールサイドでぼんやりしていた。
そこへ、ソムがやってきて「シュリンプノ、オイシイミセアルヨ。イッショニランチドウカ?」
彼は、気遣ってくれているのだ。もちろん一緒にでっかい海老を食べ、いろんな話をし楽しく時間を過ごした。買い物にも付き合ってくれた。写真を送って欲しいと、バンコクの住所も教えてくれた。

……つづく
by sally_brown | 2004-12-19 00:00 | おともだち

a warm puppy, knowing who you are, being glad you're you.


by sally_brown(さり)