初めての方は、
流浪の行く末 〜
続:流浪の行く末 〜
続々:流浪の行く末からお読みください。
翌日、末吉は……
まだ、地下駐車場で独りぼっちでした。
虎ニイと焦ネエは、隣家の庭で無邪気にじゃれあったり、のんびり眠ってしています。
末吉は、また隣家側の塀へ向かって悲痛な泣き声を上げながら、母猫の救出を待ちます。
こころなしか、その鳴き声も弱々しくなっているように思えます。どうにもしてやれない悔しさで、悲しくなってしまいます。末吉の鳴き声が聞こえるたびに、ベランダに出ては様子を見ていました。
やがて、母猫が末吉のところにやってきました。駆け寄る末吉、甘えまくってすり寄る末吉。
そして母猫からたっぷりとお乳をもらいました。ああ、でもそれは一時の母と子の時間なのです。
お乳をあげ終わった母猫は、すっと立ち上がると、またピョンピョンと塀を飛び越えて、虎ニイと焦ネエのいる庭へ行ってしまいます。こっちの子どもたちにも、お乳をあげなくてはなりません。
末吉は、必死に鳴いて母を止めますが、母猫はそれを振り切って、行ってしまいました。
末吉は、また独りぽっちになってしまいました。
コンクリートの駐車場に、ポツンとうずくまる小さな茶色のかたまり、末吉。
「かあさんは、このまま末吉をここで別に育てるつもりなのか?」
ノラ暮しの猫たちには、ノラなりのルールがあるのかもしれません。そこには、ヒトが立ち入ってはイケナイような気もします。それにしても、末吉はどうしたらいいのでしょう? なにかしてあげられないものか? ペット不可のわたしの部屋では飼えないし、飼える状況でもありません。
梅雨の晴れ間の暑い日でした。末吉は、どんなにか心細いことでしょう。
居ても立ってもいられず、プラ容器に水を入れ、せめてもの差し入れをしました。
他人様の地下駐車場ですから、入り口付近にそっと置いてきました。
「末吉、気付いてくれ! せめて、水でも飲んでくれ」……祈るような思いでした。
その日の夕方、ベランダからのぞいたら、なんとも意外なものを発見したのです。
発見した意外なもの……それは!